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日本に於いて、かつては地震・雷・火事・親父という言葉が存在し、怖いものの象徴とされた。現在でも地震・雷・火事は恐ろしいものだが「親父」はもはや怖い存在ではなくなっている。1960年代以降において、普段家に居ない父親の家庭内に於ける地位が低下、特に多くの国民が中の上といった生活を望むようになり始めた1970年代以降には、それを購うに足る稼ぎを挙げられない父親は、ダメおやじ(同名漫画は古谷三敏作)の烙印を押され、貶められた。

1980年代よりはドメスティックバイオレンス(近親者からの暴力)の問題が知れ渡ると、次第に暴力で家庭内の権力を維持しようとする男性への批判が高まり、特に単なる暴力的性格によって配偶者や子供を殴る・蹴るといった行為で従わせようとする父親像は、人格破綻者扱いされるに到っている。

勿論、封建社会にあっても上下関係による主従はあれど、行動の正しさや威厳で一定の地位を築いていた「親父」もあれば、単なる暴力で君臨していた「親父」(「血と骨」における金俊平などが典型)もあった訳だが、今日に於いて後者は、家庭内で君臨することができたとしても、社会的には許容されえず、妻子に暴行を繰り返す男性は、警察の取り締まりの対象にもなっている。その一方で威厳や行動の正しさを示すことで地位を示すにせよ、兎角流動的な価値観の多い現代にあっては、公正で明確な「正しさ」が示し難い事も在って、単純には行かなくなっている背景も見られる。

1990年代には封建時代における父親の威厳は崩壊、母親と代わる所の無い「甲斐甲斐しく世話をして、子供に奉仕する」という立場となっている。これらは各々の家庭に於けるライフスタイルであるため、否定され得る所ではないが、古くより男親が担ってきた、社会規範(社会性の教育)としての存在を、この逆転家庭において維持出来うるかを危惧する向きもある。ただし1970年代以降、男親の社会規範教育能力は(家庭内不在を含めて)極めて低下していたため、「これ以上は悪く成らない」と見る向きもある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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